トトリのアトリエ 〜アーランドの錬金術士2〜

※シリーズ初プレイ

トトリのアトリエ 〜アーランドの錬金術士2〜

ガストの代表作である『アトリエ』シリーズの12作目。副題にもある通り前作『ロロナのアトリエ 〜アーランドの錬金術士〜』の続編にあたる作品であり、ついこの間最新作である『メルルのアトリエ』が発売されたことからも、飛ぶ鳥を落とす勢いでその人気を確立しているシリーズと言えるでしょう。そのキャッチーな(というか媚びた)絵柄にホイホイ釣られた僕は、満更でもない様子でプレイを開始するのでした。

「冒険」と「錬金術」の組み合わせが、ゲーマーのやりこみ意欲を刺激する

今作には、「行方不明の母親を探し出す」という大きな目標が提示されています。主人公・トトリは当面この目標を達成するために東奔西走することとなり、そのツールとして今作の醍醐味である「錬金術」や「冒険」が登場します。ここで特徴的なのは、そのプロセスにおいてどういった行動を取るかは全てプレイヤーに委ねられているということ、そしてそのプレイ内容如何によってはエンディングにも変化が起こるということです。故にストーリーラインに沿って進めていく定番物(最近の究極的事例としては『FF13』)というよりは、『サガフロ』などに代表されるマルチエンドかつ自由度の高いものを想像してもらえれば分かりやすいでしょう。

さて、件のお母さんを探すためになくてはならないのが、前述の通り「冒険」と「錬金術」です。トトリは、前作主人公・ロロナの弟子という位置付けでアーランドでも稀有な錬金術師という肩書きを持っており、同時に冒険者であった母親への強い憧れから冒険者にもなっちゃうという非常に欲張りな少女でありました。

「冒険」とは、言わばフィールドの探索であり、もっと突き詰めれば素材の収集です。対して「錬金術」はその素材を使って自分好みのアイテムを生み出すことと言えます。双方は切っても切り離せない要素であり、必然的にプレイヤーは「冒険」と「錬金術」を並行してやっていくことになるわけですが、今作の面白さはこの二つの組み合わせに集約されているといっても過言ではないでしょう。

錬金術のアイテム作成に必要な素材は多種に渡ります。さらに各素材には「特性」と「品質」と呼ばれるパラメータがランダムで設定されており、基本的に“品質が高く有用な特性を持っている”素材を使用することで、作成後のアイテムの効能も高まることになります。つまるところ、同じアイテムでも別々の素材から作成した場合、その特性や品質の影響を色濃く受けることがアイテム自体の性能に変化をもたらし、結果的に作り手のさじ加減でその性能は自由にコントロールすることができる、と言えます。これが今作の肝である「錬金術」にこれ以上ない奥深さを生み出しています。例えば、それは大げさに表現すると『パワプロ』のサクセスで良い選手を作り上げた時の達成感であったり、あるいはRPGのアイテム図鑑をコンプした時の充足感であったりといった、“ゲーマー的やりこんで幸福感じるポイント(造語)”を上手く押さえているように感じさせました。

そして、これらの作成したアイテムの使いどころは、「冒険先での戦闘」、「特定アイテム納品」の2パターンに大別できます。戦闘を例に取ると、自分がどのようなアイテムを作成してきたかで戦況は大きく変わります。特に強敵相手だとその傾向は顕著で、良質なアイテムを作っているほど勝率が上がって最終的に相手を蹂躙することも可能であり、転じて納品の場合は高性能なものほど依頼者の評価を上げることが出来るため、より良いアイテムを作ろうという気にさせてくれるのです。ここで思い出さなくてはならないのが、これを実現するためには“良い素材”が不可欠であるということ。それはつまり「冒険」であり、切っても切り離せないといった所以はここにあります。

あの敵強すぎ!何とか倒したいなぁ… → 高性能な爆弾を作れば何とか倒せるんじゃないか? → 
むむ、この爆弾を作るためにはあの素材が足りないしそれにあの特性も付けたい… → じゃああのフィールドに行って素材をゲットしよう!

このゲーム、前述の素材集めなど共通するところもあり僕は『モンハン』を思い出しました。ジャンルの違いはあれど、その面白さの本質には似たものを感じさせますし、「冒険」と「錬金術」が相乗効果となってプレイヤーのモチベーションをドンドン引き出していることには、他のRPGにない『アトリエ』らしさを垣間見ました。

パッケージを見て「買うには勇気がいるなぁ…」などと思ってしまうアナタへ

もちろん好き嫌いはあります。あくまで客観的に見ての話ですが、純粋に岸田メルさんの美しいイラストがあのクオリティで動いているのを見ると、萌え云々抜きで技術の進化を感じずにはいられません。グラフィックも洋ゲーの超絶描写には程遠いものですが、キャラデザを見るとそれも必要のないものというのが分かります。ゲームだけでなくアニメ等でも起こり得る、デザイン段階と実際の動いてる絵が全然違う!といういわゆる「コレジャナイ感」も、今作にとっては杞憂でした。

オタクに媚びているかどうかと聞かれれば、即答できます。媚び媚びであると。普通におっぱいの話とか出てきますし、水着イベントももちろん用意されています。そういった要素に嫌悪感を示される人がいることは理解していますし否定もしませんが、それだけで今作をやらないと言うのはあまりにももったいない。ゲームとしての根本的な面白さは先ほど説明した通りですし、何より今作は「萌え」と同時に「ファンタジーな世界観」も内包しており、かわいらしくも幻想的な雰囲気を作り出している点にはとても好感が持てました。これが『アトリエ』らしさであるならば、僕は喜んで他のシリーズ作品もプレイしたいと思います。

とんでもなく蛇足ですが、最近売れに売れている岸田メルさんですが、個人的に彼の名前を聞くと一番に『神様のメモ帳』を思い出します。あの方の描くアリスこそ真骨頂でしょう!とここで勝手に提言。

総評

基本的にべた褒めしかしませんでしたが、それほど面白いゲームだと思います。UIやマルチエンディング故の周回プレイが想定されている点など細かな不満はありますが、それらを補って余るほどの“ゲームとしての面白さの本質”がこれほどに磨きあげられている作品は、あまりないように感じました。それは、「冒険」と「錬金術」の相乗効果によって生み出されるやりこみ意欲の喚起に他なりません。そして、それをゲームのメインに据えている以上、多くの人をドップリとその世界に引き込む魔力を持っているように思えます。

もし僕と同じように『アトリエ』シリーズをプレイしたことがなく、さらに前作『ロロナのアトリエ』をもやったことがないという理由で躊躇されるのであれば、その不安は全力で取っ払っていただけると助かります。『ロロナ』をプレイすることでニヤリとさせられる部分があるというのは見受けられましたが、僕が何よりも感心したのはトトリ自身にも前作の知識がないという点です。ご新規さんお断りではなく、主人公自身に『アトリエ』シリーズ初プレイの僕が投影できるというのは非常に快適なものでした。トトリのこともよりブヒれるようになりました。このようなかわいらしくも幻想的な世界だからこそ、ユーザーフレンドリーなゲームデザインを感じることができたとも思ってしまいます。

トトリのアトリエ ~アーランドの錬金術士2~ PS3 the Best

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