ニンテンドー3DS値下げについて思ったこと

任天堂、ゲーム機「3DS」を1万5000円に値下げ ―― 日本経済新聞
正直見た時はにわかに信じがたい情報でしたが……本当なんですね。いろんな意味でビックリです。
3DSが日本で発売されたのは2月26日。発売されてから半年も経たない内に値下げに踏み切ったハードというのは、価格発表から多大なブーイングを受け発売前に値下げに踏み切ったPS3というイレギュラーを除けば、他にないんじゃないでしょうか(調べてないので適当全開ですが、異常事態に変わりはない)。それも1万円という額もなかなか衝撃的な話で、5000円平均で段階的に値下げしていくのが業界での定石ですが、そういった過程すらすっ飛ばして強硬とも言える手段に出たということはそれだけ任天堂は追い詰められていた証明になるんでしょう。

正直なところを申しますと、任天堂の企業体質を疑ってしまうほどの施策と思ってしまいました。購入者へのフォローが「VCのファミコンタイトル&GBAタイトル10本ずつ無料配信」という若干納得のいかない火に油を注ぐような対応というのはもちろんですが、やはりそれ以上に1万円という値下げ幅の大きさが心証を悪くしています。

天下を取ると回りが見えなくなるもなのか……結果論ではありますがユーザーの足元を見すぎましたね。そもそも2万5000円という価格は3DSの持つパフォーマンスに見合う価格だったのか、という話です。ロンチタイトルに恒例の『マリオ』がなければ、その後のラインナップもいまいち弱く、注目作が『時のオカリナ』の移植という時点で新しい遊びを提供できていない。かつてのPSPを見ているようで、とても国内3000万台を突破した国民的ゲームハードの後継機とは思えない惨状です。任天堂自身もラインナップの弱さは認識していたようですが、それでも強気な価格設定に及んだのは何よりの自信の表れだったんでしょう。結局、それは慢心以外の何物でもなかったわけですが。

ソニーにしても任天堂にしても、大成してからの舵の取り方が下手すぎです。素人がなに言ってんだ程度に聞き流して欲しいんですが、業界内で一時代を築き上げるほどの技術力を持っていながらそれを殺すのもまた自分というのは、調子に乗ったが故に行き先を見失った何よりの証拠でしょう。任天堂なんか特に64やゲームキューブで苦汁をなめているのだから、そういったノウハウはあるはずなのにまた同じような過ちを起こしている。うーん、これでは企業の底が知れるというものです。

僕個人としては3DSを持っていないので朗報ではありますが、やり方が姑息で印象はちょっと悪いです。常識的に考えて、値下げを計画していたならば、その直前に新色を投入して購入意欲を煽るようなことはできないはず。ましてや申し訳ないという気持ちを表現するならば、購入者に対するフォローもその価格に見合い十分納得のいく何かが提供されて然るべきでしょう。ちょっと、ユーザーを馬鹿にしすぎ。一流企業がすることとは思えない愚行です。

まあでもそんな批判ばっかりしてても仕方がない。もっと肯定的に考えれば、現状をしっかりと認識して尻に火がついた状態と言えなくもないので、任天堂の真価が問われるのはまさにここからなんでしょう。ただ一つ言えることは、これだけ思い切った価格にしても結局それに見合う価値を提示できるかが全てであり、それはゲーム業界においては面白いゲームをドンドン出していけるのかどうかということに他なりません。業界リーダーである任天堂ならできると信じていますが、これ以上立場を危うくしないで欲しいものです。



■追記
色々言いましたが、1万5000円と聞くと一気に安く思えてきたので正直買おうか悩み中。現金なもんですね自分も。愚行であることは撤回できませんが、同時にゲーマーとしてはここまでした任天堂に対して敬意も感じています。ハードを普及させようという本気が伝わってきたので、それに応えるのもまたゲーム好きのやるべきことかなと。でもやっぱり……ソフトをもっと充実させてくれ!ってとこに落ち着いてしまうのよね。そういう意味では、価格改定でハードルも下がってようやくスタートラインに立てたという感じでしょうか。大分遠回りしたけど、頑張れ任天堂。年末だけの覇者なんて言われないよう全力で頑張れ。