【体験版】ルートダブル - Before Crime * After Days -

※3月28日からゴールドメンバーシップ向けに先行配信されている『ルートダブル - Before Crime * After Days -』の体験版の感想です。

というわけで、中澤大先生が送る最新作『ルートダブル - Before Crime * After Days -』の体験版がゴールドメンバーシップ向けに先行配信されたのでプレイしてみました。

そもそも中澤工って誰よ??

よもや『ルートダブル』の情報をこの段階から収集している方で中澤氏について知らないなんてことはないと思いますが、一応説明。

中澤 工(なかざわ たくみ、1976年11月19日 - )は、新潟県出身のゲームクリエイターレジスタ所属。テキスト系AVGを主に手掛ける。その仕事の幅はディレクション、 プランニング、プロデュース、脚本の執筆など多岐にわたる。

【代表作品】 infinityシリーズ、I/O、Myself ; Yourself、シークレットゲーム -KILLER QUEEN-、etc

『infinityシリーズ』を総合的に監督した人であり、特筆すればADVゲームを語る上で外せない『EVER17』のディレクターを務めた方と言ったら分かりやすいでしょうか。単純に読ませるADVを作るというよりは、複数の主人公や複数のルートで物語を多角的に展開していき、溜まりに溜まった謎や伏線を最後に怒涛の勢いで回収していく、という聞いただけで面白そうな作り方をされているのが特徴です。全体的にミスリードが多いですかね。『EVER17』の衝撃が凄すぎたため後発作品ではネタ部分が微妙に上滑りしている時もあったりしますが、基本的には良質なADVを世に送り出しており、ADVゲーム界隈における巨匠の一人と言えるでしょう。

グイグイ物語に引き込む導入部分はさすがの一言

西暦2030年9月16日 午前6時19
「鹿鳴研究学園都市」の郊外、
湖畔にそそり立つ、巨大な科学研究施設「ラボ」にて、
『事故』発生……!

かくして、ラボの地下に9名の男女が閉じ込められた。

刻一刻とが蝕んでいく世界。固く閉ざされた出口
頻発する不可解な現象。多くの
そして……閉鎖空間の中で発生した、猟奇的な大量殺人
この超極限状態から抜け出す(ルート)は2つ――

ラボの中で記憶を失ったレスキュー隊の隊長――笠鷺渡瀬。
渡瀬の視点で繰り広げられる、9時間の脱出劇。

ラボに閉じ込められた高校生――天川夏彦。
夏彦の視点で追想される、事故発生までの6日間の軌跡。

2人の思惑、2つの記憶が重なるとき――全ての真相が明らかになる。
果たして、9名全員が無事生還できる道は、残されているのだろうか?

このキャッチーなストーリー紹介がまず見事ですよね。事故発生!閉鎖空間!猟奇的な大量殺人!この辺りのキーワードが出てくるだけでヨダレ出ちゃう…。当然見せ方も慣れてるなというか、赤字を効果的に織り交ぜることで特定の数字やワードを意味深に演出し、プレイヤーの期待をとことん煽る、と。自らハードルを上げまくっているという見方もできますがw

実際にゲームを始めてみると、このストーリー紹介に負けない形で物語は刺激的に進行します。電撃のインタビューでも語られていましたが、とにかくテンポを大事にしている点が伺えました。題材的に専門用語なども頻出する作品ですが、序盤はそういったところはとにかく省いて事故発生の様子がスピーディに描写され、プレイヤーの興味を引き込むことに終始する。ハラハラする場面が一段落したと思いきや、新たな困難が訪れプレイヤーを再度不安にさせる。聞いただけだと疲れそうですよね。でもそういったネガティブな感情よりも、「え、どうなっちゃうの?どうなっちゃうの?」という“楽しいけど落ち着かせてくれない”アドレナリン垂れ流し状態!みたいな興奮を味わえます。ひとえにそれは、シナリオ構成から一つ一つのセンテンスに至るまで如何にリズムを崩さず展開させるか、という目標を達成せんとしたシナリオ原案者とライターさんの努力の賜物なんでしょう。本当に恐れ入ります。

序盤は件の事件による「放射能が蔓延する閉鎖空間」の発生という点から、ジャンル的には「サバイバル・サスペンス」みたいな様相を呈しています。「AD」と呼ばれる“1時間だけ放射能を無効化する”というトンデモ薬品を摂取して生き永らえ、出口を探していく。その先々で要救助者を発見しては、必要となるADが増え続ける事態に備えてAD回収に尽力する。そういった背景からまさにサバイバルと表現できるわけですが、そこで物語は急展開を迎えます。ストーリー紹介で既にありますが、明らかに人の手によって殺められた死体を発見してしまうのです。このミステリーとの絡め方がホント上手いですよねー。事故発生後は、とりあえずAD見つけて要救助者見つけて出口見つけましょー、みたいなある種のルーチンワークに突入するため物語は一応の落ち着きを見せるのに、そこで他殺体を発見してしまったら謎の殺人者にも気を配らなければならない。脅威は放射能だけではなかったという絶体絶命な極限状態の出来上がりです。

これ以上はネタバレになるのでここら辺にしておきますが、この後もとにかく先が気になる展開が続くんです。謎が謎を呼び、そうしてラストを迎えても謎は増えるばかり。当然Aルートだけで全貌は見えてきません。Bルートもプレイすることで真相に近づいていくこととなります。この人の作品ではもはやお約束ですね。この焦らし方がたまらない!

物語への没入感を高めるのに一役買っている「Senses Sympathy System」

今作では「選択肢」が存在しません。だからといって物語が分岐しないわけではなく、分岐点では「Senses Sympathy System」という新機軸のシステムが採用されています。これに関しての詳細は公式サイトインタビューを見て各々理解を深めていただきたいのですが、実際に触ってみるとこれがまた面白いものだなと感じました。物語が分岐するところでその選択をプレイヤーに委ねるという点では、本質的な部分では「選択肢」と似ていますが、決定的に違うところがあります。それは、安易な消去法が使えないということ。つまり「選択肢」の場合はとりあえずこれ選んで、そんでダメだったら次はあれ選んで…という風に特に考えなくとも攻略できてしまうのですが、「Senses Sympathy System」においてはコイツが通用しません。答えが提示されていないので、正解ルートに進むための攻略方法を能動的に模索しなくてはいけないんです。

何だか面倒に見えますけど、でもこれって凄い理に適ってますよね。ADVってテキストを読ませるのとゲームならではのインタラクティブ性を両立させたジャンルなんだから、それをプレイヤーに積極的に煽るには物語上にある程度の壁は必要です。それを乗り越えるためには、物語への理解を深めてキャラクターにどうさせるかをプレイヤーが考えるべきであり、それが「選択肢」ではちょっと親切すぎる部分もあった。そういった風潮に風穴を開けたのは英断だと感じます。

そして、同時にこのシステムが見事なのは、キャラクターへの感情移入、もっと平たく言ってしまえば物語への没入感をより高めている点にあります。主人公が他のキャラクターに対してどのような印象を持っているのか、を数値として振り分けさせるというのは、プレイヤーが主人公にどれだけ感情移入しているかというのを計る側面があり…というか、これってもはや感情移入というよりも“なりきり”ですよね。彼を信用します、彼女を信用しません、という細かい部分までプレイヤーのさじ加減で変わるゲームって今までなかったでしょう。そんなことまでさせてくれちゃあ、感情移入しないなんて言う方が嘘になる。バッドエンドを迎えちゃうかもしれない危機的状況だったら、もうそれは主人公になりきらなければ一発回避は難しいってものです。

感心、というよりも感服しました。なんかもうADVの新たな可能性を見たと言っても過言ではないくらいに。確かに最初は複雑だけど、理解できたら一気に面白さが分かってくるというゲームシステムのお手本のような出来。開発者のオ○ニーなんかでは決してない、面白さとゲームへの必要性を兼ね備えた至高のシステムです。…めっちゃ褒めちゃった!!まあそれぐらい衝撃的だったということでここは一つ。

総評

はい、もう面白すぎます。やられました、また中澤大明神にやられました!悔しい!でも感じちゃうビクンビクン状態がこれほど感じられたゲームは久しぶりです。「製品版でもないのに結論を出すのは早計すぎやしないかい…?」なんて言われてしまいそうですが、いいんです!体験版だけで凄い面白かったのは嘘ではないし、「Senses Sympathy System」などの新システムは見事と言う他なかったため、オチがよほど酷くなければ“神ゲー”という評価は約束されたようなものでしょう!多分!

単純にシナリオへの面白さに目がいきがちですが、テキストにしてもシステムにしても非常に丁寧に作られた印象を受けました。「俺はこれが表現したいんだよ!」というスクエニ特有の押し付けがましさが感じられず、プレイヤー目線でゲームを作っているのが凄い伝わってきて好感触です。発売日延期は残念でしたが、それも製品のクオリティアップのためとなれば割り切れるし、何よりこんな大ボリュームな体験版を配信するというサービス精神に涙が出ます。

「ゲーム開発は大変な現場だとお察ししますが、何とか頑張って良いゲームを作ってください」なんて労いをこんな辺境ブログで声を大にして叫びたくなる、そんなゲーム。製品版を全力で期待しています。

ルートダブル Before Crime After Days(限定版) - Xbox360

ルートダブル Before Crime After Days(限定版) - Xbox360

ルートダブル Before Crime After Days(通常版) - Xbox360

ルートダブル Before Crime After Days(通常版) - Xbox360