『ブレイブリーデフォルト』には割とマジで売れて欲しい

スクウェア・エニックスは、2012年に発売する3DS用ソフト『ブレイブリーデフォルト』について、体験版を遊んだユーザーからの意見を反映した部分を示す“修正対応動画”を公開した。

■改善した部分
・歩く速度が遅い/走り速度とスライドパッドの深度→移動速度を20%アップして、スライドパッドを軽く入力しても走る形に調整
・loading表示が気になる→文字を非表示にする形で調整
NPCへの話しかけが近い→少し遠くからでも話かけられるように調整
・Aボタンでのテキスト一気表示→一括で表示する形に調整
・宿屋処理が遅い→サウンド発生や画面を暗転するタイミングを調整
・マップチェンジごとのカメラの引き→外観マップの引きカメラはフィールドからアクセスした時のみに調整

素晴らしい。ただただ開発陣には労いの言葉を贈りたい。

確かに地味な改善点ではありますが、こういったところはゲームをプレイすればするほど気になってくるポイントであり、どんなにストーリーが秀逸でも戦闘が面白くてもプレイヤーの心理的にマイナス要素として引っかかって、結果全体を通した評価にも余計なブレーキをかけてしまいます。「ゲームのコンセプトは面白いのにプレイアビリティが最悪だ……」なんてゲームは割と多くあるんです。そんな事態を未然に防ぐためにも、体験版をプロモーションの一環としてだけではなくユーザーのフィードバックも促していたのは非常に好感が持てるところ。

個人的にも改善して欲しいと感じていた「歩行速度」と「ボタン押しでのテキスト一気表示」の二つがちゃんと開発陣に伝わっていたのは嬉しかったです。歩行速度なんか仮にあのままの状態で発売されていたらそれなりに非難があったことでしょうねー……。横の移動はまだしも奥への移動はかなり遅いと感じさせるスピードだったので直って良かったです。あとは戦闘のテンポとか、敵と味方の距離が近すぎて絵的にシュールといったところが手直しされているのかが気になります。あの距離でお見合いしているのはさすがに不自然でしたよw

それにしても、体験版を数回に分けて配信するなんてなかなか景気のいい話ですよね。確か体験版は配信するだけでもライセンス料なりかかるはずなのでそれなりの予算が組まれているタイトルじゃないとなかなか難しいんですが、それを一度配信するだけに留まらずここまで小分けにして出してくるというのはスクエニの力の入れ方もかなりのものであることが伺えます。その割にイマイチ盛り上がりに欠けている印象はありますけど……まあまだ発売日も何も決まっていないし仕方ないところなのかな。あくまで個人的な所感ではあるんですけども、世界観の構築が緻密だったりボリュームが凄いという噂があったりとそこかしこに大作感は出ているんですが、何とも形容し難いところですけどあえて言うならば「地味」という言葉がシックリきていて微妙に不安を感じています。もちろんシナリオ担当が『シュタゲ』の林さんだったりと刺激的なニュースもあるんですけどね! 等身の低さとかちょっとした古臭さが妙な負の感情を掻き立てているのかもしれない。

色々と不安もありますが、3DSRPG作品としてはかなり期待していますし、開発陣にも好感が持てているので是非売れて欲しいと思います。体験版の第3弾の配信も予定されていることですから、それに併せて発売日やらなんやら公開されたら盛り上がってくれるでしょうね。これからも応援しています。

『DmC Devil May Cry』が2013年1月に海外で発売決定。それにしてもこの女キャラは……

本日カプコンは、Ninja Theory開発のデビルメイクライシリーズのリブート作『DmC Devil May Cry』を、北米と欧州で2013年1月15日に発売すると発表しました。

今のところ国内向けの発表はまだですが、2012年中の発売予定から延期したことになります。また、Xbox 360PS3に加えて新たにPCバージョンの発売が確定。海外で2013年リリースを予定しており、既に開発が進められているとのこと。

というわけで、2012年中の発売がアナウンスされていた『DmC Devil May Cry』でしたが、海外では年明けすぐの2013年1月15日に延期された模様です。日本での発売時期は未だ不明ですが、この海外発売日は一つの目安になりそうですね。デベロッパーはニンジャセオリーという海外スタジオですが、パブリッシャーはカプコンなので日本を優遇するかもしれないし、一方で見た目完全に洋ゲー風味となった今作は海外先行発売も十分あり得る状態。つまるところ、2012年末から2013年3月辺りが考えられる範囲なんじゃないかと思います。

それにしても、結局2013年までずれ込んだか……。仕事遅すぎでしょ、いつから開発してんのと言いたい。ただでさえ外注でキャラデザもひどくて批判されまくりなのに、情報公開もダラダラしていて全く盛り上がる気配もない。『デビルメイクライ』という偉大なIPを自ら破壊しにかかっているカプコンは愚かとしか言いようがなく、ファンと製作側の理想がここまで乖離してしまった現状をどのように見てるんでしょうか。走り出してしまった列車は止められないというやつなのかな……せめてダンテが従来の銀髪イケメンだったらここまでの話にはならなかっただろうに、残念で仕方がない。

と思ったら今回発表された女性キャラクター“Kat”もなかなかひどい有様じゃないか! トリッシュやレディとは一線を画するデザイン。溢れ出る洋ゲー臭。どんなにカプコンスタッフが監修してると言ってもやっぱりこれは従来の『DMC』とは別物だと思わずにはいられない。どうしてこうなった。誰がこれを望んだというのか。こんな紛い物を作っている暇があったら『5』を作れたんじゃないか。その方が商業的にも成功だったんじゃないのか。

この作品を見ていると色々な感情がとめどなく押し寄せてきて息がつまりそうです。ここまできたらせめてアクション部分は面白いものであることを望みますが、シリーズに傷を塗りそうな要素が散見されるだけに不安が止まらない。だからこそ、今作に関しては体験版の配信を切望しています。ここまで自分勝手のものを作ったんだから、事前にその良し悪しを判断する機会が用意されるのは当然でしょう。頼む、マジで頼みます。

PC版『イース7』が日本で楽しめる日は果たして来るのか

日本でも発売が待望されているPC版『イース7』。中国では6月20日に発売されることが決定したようです。

なぜ中国のみでの展開なのか、そこには様々な大人の事情が絡んだ結果かと思われますが、一番の理由は国内コンシューマ市場におけるファルコムの躍進、それに伴うリソースの配分がコンシューマ機に大部分を割かれるようになったからでしょう。売上の分散という余計なリスクも背負いかねないPC版とのマルチは、『イース7』や『零の軌跡』以降PS陣営で確かな存在感を示すようになったファルコムにとっては逆に手を出しにくくなってしまった領域なのかもしれません。

しかし、この圧巻のHD画質で今一度プレイしたいと思ってしまうのがファン心理であり、加えてPC版自体の需要が決して少なくないのも事実です。中国語であろうとPC上で動く『イース7』があるならば、あとはパッチを当てれば済むだけでありそこまで難しい話でもありません。もはやなかったことにされている感はありますが公式のマルチプラットフォーム展開のアナウンス(リンク先:PDFファイル)もあったことですし、ここで帳尻合わせる意味でも国内での発売に踏み切っていいのでは??と思わずにはいられない。

ただまあ、昨今のファルコムを顧みるにそのままPC版を発売する可能性はあまり高くないのかもしれません。例えば『零の軌跡』というタイトルにおいては、グラフィックの強化に加えてフルボイスという新たなウリを押し出し『英雄伝説 零の軌跡 Evolution』というタイトルでVita市場に送り出される予定ですし、その売上如何では『碧の軌跡』も同じレールの上に乗ることになるでしょう。こういった戦略からもファルコムがコンシューマ市場に特に力を入れていることが伺え、実際のところそれが功を奏して業績も右肩上がりとなればPC版を今更出すのは商業的にもあまり意味を持たない。そんな中でPC版『イース7』を中国で発売するのは、そういった理念に基づきながら中国のハード普及率を考慮に入れた結果にほかならないわけで、経営的にも合理的な施策というところなんでしょうね。

うーん、でもやっぱファンとしては残念かなぁ……。なんでもいいからアナウンスは欲しいところですよね。個人的に、まあファルコムの企業規模を考えればそんな体力はないでしょうけど、このHDリマスターをPS3とかで発売してくれればなかなか面白いかなとは思います。コンシューマ市場での更なる躍進を目指すファルコムの経営戦略にも合致するし、新たなファンを獲得する場所としてはPS3の方が色々と可能性を秘めている気がします。……ああ、それよりもVitaという選択肢がファルコム的には上なのかな。Vitaはビジネス的にまだまだ不十分な市場ですからリスクヘッジはどこかで求めるべきな気もしますけど、『セルセタの樹海』がVitaで絶賛開発中ならばシリーズ作品を同プラットフォームで展開するのはあり得るか。

まあどうなるかなんて分かりませんね! とりあえず少しでも何かしらの発表があればいいなとは思います。

ヒャッホイ! 『狩猟音楽祭2012』に当選したよ!

当選きちゃあああああああああああああああああああああああああ!!!

嬉しい! マジで嬉しい! 倍率が果たしてどんなものだったのかは知る由もありませんが、夏の楽しみがまた一つ増えて喜ばずにはいられない! 1000円しか変わらないならどうせならということで気前良くS席にしちゃったぜ! オーケストラの生演奏を肌でビリビリ感じてこようと思います!

この間jdkバンドのライブに行けなかったので、今度こそは万全を期したいところ。まあしかし今回は8000円ですからね、jdkライブの実に倍の価格! 何があっても絶対行くからな!w あーそれにしても良かった、一安心。

コード・オブ・プリンセス

ガーディアンヒーローズ』の遺伝子を継ぐアクションRPG

ギャグテイストな世界観、3ラインバトル、対戦ではメインキャラ以外のサブキャラや敵キャラまで使用可能な点など、1996年にセガサターンで発売された『ガーディアンヒーローズ』と多くの共通点を有しているのが、この『コード・オブ・プリンセス』です。まあそれも当然といったところでしょう、メインの開発陣は同じなのですから。

何かと『ガーヒー』の名を目にするために「『ガーヒー』もプレイしてた方がいいのかな?」という強迫観念に襲われてしまいそうですが、システムに類似性は見られても続編という位置付けではなく完全新作なので気にする必要はありません。あくまで『ガーヒー』のDNAを宿した新作アクションRPGであり、従来のファンから新規まで幅広い層が遊べる作品です。

そういえば、先日発売されたライトノベル『僕と彼女のゲーム戦争3』でも『ガーヒー』は取り上げられていて、その中で『ガーヒー』の魅力を上手く活字に起こしていたことは個人的に印象深いところです。そんじゃあ「『ガーヒー』の魅力ってなによ?」って話になるわけですが、僕がまず思うのは、簡単なコマンド入力で繰り出せる技を繋いで独自のコンボを組み立てていったりといった格ゲー的面白さを、格ゲーほどシビアでもなく初心者も歓迎なデザインに押し留めているところ。それ故に初心者も十分楽しめるのは言うに及ばず、そのコンボに関してもキャラクターの数だけ様々なパターンを考えることができて、上級者もディープに楽しめる懐の広さがあります。そして2Dのライン制を採用しているというのも大きなポイントで、3Dほどの複雑さを感じさせなければ、ライン制というのが逃げ道を作ってくれてこれが一種の『スマブラ』的ハチャメチャ感を与えてくれることにより、必ずしもプレイヤースキルに依存しない間口の広さを生み出しています。

あとは、対戦においてサブキャラや敵キャラまで使用できたりとか、ユーモアなネーミングセンスに代表される奇抜な世界観なども『ガーヒー』を語る上では外せないところです。最近のゲームにはあまり感じられない挑戦心豊かな内容こそが根強いファンを多く勝ち取り、また対戦ゲームとしても大きな賑わいを見せる最たる理由だと僕は思います。

ここで話を『コープリ』に戻しますが、『コープリ』はまさにこの『ガーヒー』の遺伝子を受け継いだゲームです。ザコ敵を跳ね飛ばしていく爽快感、コンボを組み立てていく楽しさなどに加えて、ネットスラングなども多発する世界観は賛否両論でありながらも突き抜けた内容を目指した結果であり、同時にロックオンやバーストなど戦略性に大きな影響を与える意欲的な新要素もあったりして、これはこれで独自のアイデンティティを形成していると言えるでしょう。現代の技術で作る『ガーヒー』としては十分アリだったように思えます。

ボタン連代でクリアできるわけでもない絶妙な難易度、キャラによる戦略の違い

序盤はそうでもありませんが、後半に進むにつれて敵の固さも増していきボタン連打ではクリアが困難になっていきます。そこでどうすればいいかと言いますと、登場するのがロックオンとバースト。

これら二つの大きな特徴は、使用することで敵に与えるダメージが増えるということ。逆に言えばこれらを無視して攻撃し続けても敵に与えられるダメージは僅かであり、如何にロックオン状態を絶やさずMPに気を配りながらバーストを発動させていくか、というところが駆け引きとして重要になってくるわけです。そしてこの要素に関しては敵にも同じことが言えて、彼らは彼らでターゲッティングをしてきてはバースト状態になることでプレイヤーに襲いかかります。これがほど良い緊張感を生み出し、またボタン連打に終始しない状態と相まってプレイヤーを退屈させません。

また個人的に特に感心したところがあって、それはキャラクターによって違った戦略の組み立て方が要求される点です。それを強く感じたのが「アリー」というキャラクターを使っていた時。彼女はいわゆるスピードタイプでパワーはそこまで高くなく、持ち前の速さでかく乱しながら戦っていくキャラクター。物語後半では結構この攻撃力が低いというところが致命的で、敵の固さもあってか倒しきる前にやられるということが多発しました。それではどうするべきかと考えた時、思いついたのが「引火」という要素です。これは吹っ飛ばした敵を別の敵に当てることで爆発が起こるという現象で、そこに敵が密集していれば連続的に引火を誘発させることができ、まとまったダメージを与えることができます。「ソランジュ」のようなパワーもなければ「ゾゾ子」のような強力な魔法もないアリーは、この引火が生命線となってくるんです。そして、それをプレイさせることで気付かせる絶妙なゲームバランスに独特の奥深さが感じられ、僕も驚かされた次第なのです。

あとこの「引火」、プレイすれば分かりますが吹っ飛ばした瞬間次々に伝染していく様はかなりシュールながら、同時に大きな爽快感を生み出している点も見逃せないところです。『無双』シリーズのまとまった敵を一気になぎ倒す爽快感にどこか繋がるところがあり、気付けば執拗に引火させようと奮闘する僕がいましたw こういった大味な部分で得られる爽快感と戦略性が問われる要素が混在しているのも今作の魅力の一つでしょう。

一級品のサウンドは一聴の価値あり!

百聞は一見に如かず、ということでとりあえず聴いて欲しいと思います。

こんな燃える曲を携帯ゲーム機で聴いていられるというのはあまりに贅沢じゃないですか!?

作曲は「ACE」。『ゼノブレイド』の一部の曲も担当していたと言えば通じやすい人たちでしょう。ギャグテイストな世界観ながらも、ボス戦やイベント戦は楽曲の力も多分に作用して燃えること必至。ここは個人的にかなり推したいポイントです。

正直粗はかなり目立つ

以上のように独自の面白さを確立している点に関しては好印象なのですが、ゲーム自体に色々と粗が目立っているのは残念なところ。

まず先ほどの引火が同時に処理落ちも誘発しているのが個人的に残念でした。そこまで深刻なレベルではありませんが、やはり動きが忙しないアクションで処理落ちはどうしても気になってしまう部分です。そしてストーリーに関してはさらに不満を感じるところで、ストーリー自体の内容が薄いという点にはアクションであるが故に目を瞑るとしても、4人分用意されているストーリーモードがほぼ同内容というのは正直見過ごせません。ていうかこれって4人分用意した意味ないですよね? 内容が違ったらプレイヤーのモチベーションにも繋がるのに、特に面白さも感じさせない凡庸なシナリオを4周させるのは酷としか言いようがありません。ならばせめて、『ガーヒー』のようなマルチエンディングを採用して周回プレイを促す仕掛けがあって然るべきでしょう。

注目でもあるマルチプレイに関しては、そもそも最高4人対戦というところが納得いきません。『ガーヒー』のいい意味での混沌としたゲーム性が薄まっていて、これではザコ敵や村人などのネタキャラに関しても存在意義が感じられず、キャラクターの多さというウリも意味を成していない。そして身も蓋もないことを言ってしまえば、プレイ人口が少なすぎて対戦が成立しにくいことが何より口惜しい! 

あと凄い個人的な意見ではあるんですが、クエストのクリアごとに一々セーブを求めてくるのもテンポを悪くしていて気になりました。せっかくのベルトスクロールアクションなんだからそのまま次に進ませてくれよ!と何度思ったことか……。良かれと思ってやっているのは伝わるのではありがたくはあるんですけど、せめてオプションで変更できたらなと思わずにはいられませんでした。

総評

本当に、本当に惜しいゲームです。ここまで詰めが甘くなければ喜んで「万人におススメできる良ゲー」と評していたかもしれませんが、それはこの出来を顧みるに難しいと言わざるを得ない。

やはり一番の欠点はストーリーモードのボリューム不足でしょう。あたかも4人分違ったストーリーが用意されたかのような見せ方も個人的に凄く残念なところで、こんなことでガッカリ感を生み出すくらいなら正々堂々と「一本道です!」と言ってしまえばプレイヤーとしても余計なネガティブイメージを持たないで済んだものを……。豪華声優陣によるボイス収録がマルチエンディングシステムの実装に弊害をもたらしたとなるのであれば、これほど本末転倒な話もありません。甘えが見えると言ってしまっても致し方ないところです。

ですが……そんな大きな不満もあるわけですが! やはり『ガーヒー』から更なる進化を感じるベルトスクロールアクションとしての麻薬的な面白さは筆舌に尽くし難いところです。ソランジュのパワーで押すも良し、アリーのスピードでかく乱するも良し、ゾゾ子やシスターヘルの魔法で殲滅するも良し、はたまたギャラクシー一刀流で変幻自在に敵を惑わすも良し、その楽しみ方は選択キャラで様々でしょう。また『無双』シリーズを彷彿とさせる敵を吹っ飛ばす爽快感と、そこから引き起こる爆発で敵を引火させまくる独自の気持ち良さは今作ならではで、是非一度体験して欲しいところです。

プレイすればするほどキャラクターが手に馴染むアクション性の深さ、そこに熱いサウンドと相まってハマれば中毒性はかなりのもの。今作を形容するにはまさに「スルメゲー」という表現が最もシックリくるでしょう。万人におススメは間違っても出来ませんが、少なくとも僕は好きな作品です。この反省を元に、また新作を出してくれればなと思わずにはいられません。

CODE OF PRINCESS - 3DS

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[CD] CODE OF PRINCESS オリジナルサウンドトラック

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チェンライ・エクスプレス

最近ラノベの感想ばっかでゲーム系ブログとしての体裁が形骸化しているような気がしているこの頃。そろそろゲームの感想も書きますが、とりあえず新刊が多い5月はラノベ中心で。

あらすじ

アジアの一角、チェンライン王国。広さはおおよそ大阪府と同程度の規模を誇る小国であるが、ここには何の因果か、人の姿をしながらも人ならざる者「人外」の者たちが人に紛れて住んでいた。彼らは何食わぬ顔で日々の生活を送りながらも、心の中では人と同じように悩みや願いを抱えている。

例えば、人造人間の男の子は心が欲しかった。落ちこぼれな魔女の女の子はその男の子に淡い恋心を抱いていた。クラブでDJをしている死神はなくしてしまった自分のカマを探していた。吸血鬼は意中の女性の血を死ぬまで吸い尽くしたかった。アンデットはどうにかして死にたかった。ウサギはご主人を探していた。狼男はカジノで一攫千金を狙っていた。人魚は…… そして神様は……

今宵は満月の夜。彼らの願いが叶うかもしれない夜。様々な思いが交錯するこの極東の地で、人外たちは複雑に絡み合い、一つの物語を紡ぎだす。

舞台はアジア極東の地、人外たちによる群像劇

様々なキャラクターが入り乱れて一つのお話が紡がれるといういわゆる「群像劇」です。そして、そこに出てくるのはほとんどが人ならざる者「人外」たちであり、一癖ある物語が展開されます。

様々なキャラクターが動いているのをコマ切れに見せることで一つの物語が形成され、それぞれのシーンが絡み合って伏線を氷解させる群像劇の面白さは十分出せていたんじゃないでしょうか。チェンライン王国の地理は割と複雑で、かつ登場人物の多さは若干の取っ付きにくさを感じさせつつも、計算された物語の運び方はそんな懸念も吹っ飛ばしてくれて、著者の力量を感じさせてくれました。

登場人物のほとんどが「人外」であるというのは、本書の大きな特徴の一つです。見た目は人間の彼らも、ここぞという場面では各々が如何に人間離れした存在であるかを証明するかのようにその能力を見せ付けてくれます。人外やら何やらという設定自体に新鮮味はないかもしれませんが、本書ではその人外であるという事実を隠して普通の人間を演じている彼らが、群像劇という見せ方を如何なく応用しているかのようにそれぞれのシーンで次々と本性を見せてくれて、ぶつ切りでも物語は盛り上がり読者を退屈させません。またその中で暗躍する「ジンノ・リョウイチ」というキャラクター、ジンノグループのトップである彼はこのチェンライン王国を影で支配するような存在とも言えそうですが、そいつが全ての登場人物と唯一繋がっている人物であり、彼の動きが物語を二転三転もさせることで予想がつかない展開が生まれ、ミステリ的要素も感じることができて読者の期待を煽るような「読ませる力」に満ちている作品だと言えましょう。

ああ、あとこの世界観に関しても触れておかなければなりません。

チェンライン王国、アジアの一国である極東の地には、ジンノグループが中心となった高層ビルやショッピングビル、屋台などに至るまで経済施設が並ぶ商業区から、高級ブティックやカジノ、キャバクラが軒を連ねる歓楽街、ならず者が蔓延るダウンタウンなどがあり、アジアの大都会らしいなんともエスニックな街並みが緻密に描かれています。イラストの力も多分にありますが、この完成された世界観はどこかの一国をリアルに想像させるほどに生々しくて、読んでいる最中は本当にこの世界に紛れ込んでしまったかのように没入させてくれたのが驚きでした。ありえそうな国でありえない存在がいるというのもファンタジーとリアリズムが絶妙な具合に融解していて、本当に、単純に、ワクワクして読んでいる自分がいたと思います。

清々しい読後感

群像劇としての見せ方が上手いというのは前述の通りですが、同時に彼らのそれぞれの物語の締め方が納得のいくもので、清々しさすら感じる読後感があったというのも僕が本書に対して良いイメージを持った一因です。

主要登場人物は11人。僕が中でも気にいったのは、トウアという人造人間の少年と落ちこぼれな魔女マナにまつわるお話です。

トウアという少年は何も生まれた時から感情がないわけではありません。ある甚大な被害を被った事件に巻き込まれたことによって、彼は瀕死の危機にさらされます。それを奇跡的に救ったのが彼の祖父であるタントラ博士でしたが、神にも背く行為は彼から感情を奪い取りました。さて、そこでマナはというと、実は彼女もその事件の被害者だったりします。彼女がそこで生き残れたのは、そう、ほかならぬトウアが身を呈して助けてくれたからなんです。こんな経緯があったら、惚れないわけがない。でも、マナの気持ちも痛いほど分かるのですが、感情を失ってしまったトウアには恋愛なんて器用なことができるはずもなく、現実はただひたすらに残酷です。

「僕はあの列車の事故で多くのものを失ったらしいよ。そう博士が言ってた」
両親、記憶、感情。失ったものは多い――だが、元からそんなものはなかったのかもしれない。あるいは、親など最初からいないのかもしれない。だとしても何が変わるわけでもない。トウアはそう思っている。
「わたしもあの列車に乗ってたの。事故の時に列車から落ちそうになって、でもトウアくんが助けてくれたんだよ」
「そうなんだ」
「トウアくん……憶えていない?」
トウアは首を横に振った。
「そう……やっぱり憶えてないんだ……」
マナはそれきり黙り込んだ。さっきよりもさらに落ち込んでいる様子だった。マナに合わせてトウアも黙っていることにした。


チェンライ・エクスプレス / 電撃文庫 / 百波秋丸 / 150〜151ページより

ただでさえ不器用なのに、そんな残酷な現実の前で何とかしようとするマナはあまりに健気で、全力で応援したくなりました。どうかこの二人には報われて欲しい。好きとも嫌いとも言えないなんてあんまりじゃないか。無関心ってやつは何よりも人を傷付ける行為にほかならないんだから。

そんな痛切な思いを抱きながらだったからか、ラストを迎えた時は本当にそうなって良かったと思えました。とても温かいラストです。このハチャメチャな群像劇を締めるのに相応しい、清々しい読後感をもってしてチェンライン王国で紡がれる物語は幕を閉じます。

第18回電撃イラスト大賞《金賞》

絵に関しては門外漢なので専門的なことは分かりません。素人の意見ではありますが、それでもこの絵はなるほど、確かに魅力的な絵柄だなと思います。

なんと言っても、普通に絵がとても見やすくて綺麗です。言葉で表現するのは難しいですが、作画がとても安定したアニメの画を見ているようで、動きを感じさせる場面は大きな躍動感を、静けさを出すべき場面はその空気感を押し出し、物語を見事に盛り上げていたと思います。

これって元から全てカラーで描かれていたのかな? 多分そんな感じなんですけど、それを白黒印刷したからなのか奥行き感もあって凄い贅沢なんですよね。背景の描き込みにも妥協が感じられないのがポイントで、見方としては新鮮味はない画風とも言えちゃうかもしれないんですけど、ラノベでこれだけ丁寧な挿絵が珍しいという意味では、評価されるべきところなんじゃないかと思います。

総評

登場人物の多さが物語に若干の猥雑さを与えているなど難アリな部分も多少見受けらますが、人外が繰り広げる群像劇という発想はとても面白く、またその物語自体も、群像劇ならではのキャラクターが様々な場面で絡み合い物語を一つにまとめていく面白さをきちんと表現できていて、本書ならではの魅力が十二分に詰まっていると言えるでしょう。また、チェンライン王国というエスニックな雰囲気を感じさせる緻密に描かれた世界も魅力的で、正直本書のみで終わらせるにはもったいないとまで感じさせます。でもこの物語はこの綺麗なまま終わらせてもいいんじゃないかという相反する思いもあったりして、このジレンマは如何ともしがたいところですが、果たして。

人外たちが織りなす物語はどこかキテレツで笑いも誘いつつ、それぞれのラストは微妙にほろ苦いものから清々しいものまで、様々です。中盤までは群像劇ならではの軽妙な物語の展開に身を任せて、終盤は次々と幕を下ろすそれぞれの物語にグッと来て欲しいと思います。

あれ、そういえば約一名カジノのオーナーだけはどうしようもなく救いがなかったような気が……まあいいかw

チェンライ・エクスプレス (電撃文庫)

チェンライ・エクスプレス (電撃文庫)

ブラック・ブレット (3) 炎による世界の破滅

2巻の感想書いてねえし……だらしねえし……

あらすじ

見回り中の自衛隊員が見たのはあり得ないものだった。

モノリスが発する磁気はガストレアを衰弱させる力があるため、本来ガストレアがモノリスの内側に入り込めることはあり得ない。だが、それは確かに内側にいた。地上50メートルほどの高さに張り付いた圧倒的異様をを放つ巨大な存在、ステージIV・アルデバラン

アルデバラン出現と同時にモノリスに異変が生じる。10年という長い年月をガストレアの脅威から守ってきた人類の作りし壁、そこに謎の白化現象が起こる。政府は緊急対策会議を開き、事態の究明に努めた。そして、突きつけられた現実に一同は言葉を失う。

白化現象はアルデバランのバラニウム侵食液が原因であることが判明。白化現象が全体に行き渡るまでには一週間。その瞬間モノリスは磁場発生能力を完全に失い、のちに倒壊する。

それは、あと一週間という僅かな時間のうちに東京エリア壊滅が始まることを意味していた。

ストーリー、構成、挿絵と全てにおいて「圧巻」の一言に尽きる

なにこれ、マジでなんなの? やばいよ、本気でやばいよ、面白すぎるよ! 運動不足を解消すべくジムで無理やり5キロ走って死ぬほど疲れた自分に絶望してフィジカルもメンタルも疲れきっていたのに23時くらいから読み始めたら止まらなくて結局寝たの4時前とかだったってくらい面白かったよ!!!

やべーブラックブレットやべーよ……早くも続刊欲してるよ……待てないよ……

何がヤバいってまずはその読者を掴んで離さない物語構成の圧倒的な巧妙さです。導入は上のあらすじの通りで、本来モノリス内に入ることができるはずのないガストレア、それもステージIVという非常に強力な戦闘力を有するものが、特に人を襲うわけでもなくモノリスにベッタリ張り付きそのまま逃走する。なぜやつはモノリスの発する磁気を突破できたのか? 人を襲うこともなく逃げたのは理由があるのか? そしてやつが飛び立った後に起こったモノリス白化現象はなんなのか? 様々な疑問を残しつつ、そこで唯一判明したのはモノリスが遠からず崩壊してしまうこと、すなわち人類の存亡の危機だということ。

なんだこの掴みの良さは。ヤバい、人類もヤバければ僕のテンションもヤバい。

そしてここで必要とされるのはやはり民警の人々。ならず者の集まり、自衛隊からも警察からも疎まれる存在、だがしかし対ガストレアのエキスパートである彼らはこの崩壊を防ぐキーであるというジレンマに、政府は応援を求めるしかない。聖天子も例外ではなく、彼女が最も信頼を置く民警に協力を仰ぐ。それは、聖天子殺人を見事未然に阻止した里見蓮太郎にほかならない。

なにこの流れ。ヤバい、アツすぎてヤバい。最近夜は冷えるけどそんなのお構いなしにアツくてヤバい。

そんな混乱の最中、あってはいけないことが起こってしまう。「呪われた子供たち」による一般人の殺害。高まる差別運動と東京崩壊が差し迫っている事実のせめぎ合い。事態は混乱を極め、治安の悪化は深刻化し、東京エリアは空前絶後のカオスと化す。そんな状況だからこそ蓮太郎は奮い立ち、「アジュバンド(徒党)」を結成するために仲間集めに奔走する。様々な強敵たちと出会い、分かち合い、生きるため、東京を守るため、この幸せを壊させないために戦う。それと同時に、徐々に判明していくガストレアの起源。超高セキュリティーに守られた動画に映ったこの世のものとは思えないショッキングな映像。今までは知ることのなかった見え隠れする陰謀。

次が最終巻なんじゃないかと思わせるほどのクライマックスぶり。人類最後の戦い的様相を呈していて盛り上がりっぷりがヤバい。これで盛り上がらずしてだったらお前は何読んで盛り上がるというのか。

そして極めつけは終わり方。 そこで終わるのかよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! その引っ張り方は反則すぎるだろうがあああああああああああああああああああああああああ!!! ああ、そんな殺生な……寸止めプレイ求めてなかったですたい……生き地獄ってこういうことですたい……

挿絵も見事の一言。一巻からそのクオリティーの高さ、安定感には定評がありましたけど、今回さらに絵自体の質にしても選ばれているシーンのセンスにしても磨きがかかっていると思います。カラーページの色使いも注目すべきところで、青空教室の解放感溢れる平和的シーンと、転じて見開き1ページ目の赤みがかった色彩で描かれる公園の不穏さを感じさせるシーンが生み出す圧倒的ギャップ。巻頭の絵から読者の関心を掴んで離さない構成は見事の一言。計算され尽くされていそうで逆にこわい、神崎紫電鵜飼沙樹がただひたすらこわい、ヤバい。

呪われた子供たちの因果な立ち位置が本当にやりきれない

1巻から描かれている「呪われた子供たち」への差別は今回限界に達します。それは、元々あった差別意識に、火に油を注ぐような形で「呪われた子供たちによる一般人の殺害事件」が発生したことにより導かれることなのですが、実はその事件に関して真相は闇に包まれたままだったりするんです。それでも「奪われた世代」がここぞとばかりに彼女たちを糾弾するのは、ガストレアに対する怒りの矛先を向ける格好の対象であるというのはもちろん、何より心のうちで彼女たちに対して恐怖を感じているから。

彼らは彼女たちの赤い目が怖いんです。人間離れした運動能力が怖くて怖くて仕方ないんです。だから、自分の家族、友人、恋人を奪ったガストレアそのものとあまりに酷似する彼女たちを弾圧する。見た目は幼い女の子でも、その存在を許すことはできない。

それを痛いほど知っている蓮太郎ですが、彼は青空教室を通して改めてそういった思想の横暴さに気付きます。彼女たちは本当に無垢で、純粋で、ガストレアウィルスを宿してはいてもその実は人間と何一つ変わらない心を持った存在であると、生徒たちを見て彼は思うのです。

蓮太郎は目を開けると、自分の生徒を順番に見る。
「一人の『奪われた世代』がやった犯罪は、その人間一人の責任で裁かれるが、一人の『呪われた子供たち』がやった犯罪は、お前たち全員に跳ね返ってくる。そのことを、お前たちにも知っておいて欲しい。人間は、生まれながらにして平等なんかじゃない」
「じゃあ……」
かすれた声が聞こえて、生徒の一人が震えながら問うてくる。
「じゃあ……どうすればいいの?」
「耐えろ。そして、絶対にやり返そうなんて考えんな。いまは、お前たちは、ただひたすら耐えなきゃいけない時期にあると、俺は思う。自分に配られた手札がどんだけ悪くても、その中から役を作って上手にアガらなきゃいけない。お前たちも同じだ」


ブラック・ブレット3 炎による世界の破滅 / 神崎紫電 / 222〜223ページより

厳しい現実を齢10そこらの少女にあえて突き付けたのは、何より彼女たちの身を案じた結果です。この言葉は特に印象的でした。ガストレアに両親を殺されながらも、延珠やティナ、生徒たちを通して育まれた彼女たちへの情愛は、腐った世の中を照らす一縷の光のようでとても温かいものを感じることができ、故に僕はこの青空教室の場面がとても好きです。

こういった「断固弾圧!」とかその逆の思想が入り混じった社会性は本書の見所の一つで、物語をさらに濃密なものにさせているという意味でも素晴らしく、没入感を高める著者の技巧が如何なく発揮されているところだと思います。人間のエゴ、呪われた子供たちの業の深さには誇張が感じられずとてもリアルで、ラノベの中でも群を抜く濃い世界観であると言えるでしょう。

総評

いやーヤバかった、3巻ヤバすぎた。今回文章見てもらっても分かる通りかなり感情的にというか、思いついたまま書きなぐった感じなので色々とテンションおかしいですが、それだけ僕の感情も高ぶっていた、つまりこの圧倒的な面白さを伝えるにはとてもじゃないけど冷静でいられなかったと解釈していただければと思います。

2巻の感想を読了直後に書かなかったのが個人的に悔やんでいる点なんですが、それほどにこのシリーズは巻を増すごとに面白くなっていると僕は感じます。元々バトルの描写や登場人物のキャラ付けも上手い作家さんだとは思っていました。でもそれがここにきて更なる進化を遂げてきているというか、読者の興味のツボを知り尽くしたかのようなテンポの良い展開と、絶妙なバランスでもたらされる伏線、そして何より物語全体のアツさが融合することで、バトル物としてはそんじゃそこらの作品では太刀打ちできないレベルに達しています。また「呪われた子供たち」の悲しい性などが根底に根付いていることで、生臭い社会性を描いているのも物語にリアリティーを持たせ、本書の独自性を際立たせています。

見事、見事と言うほかにありません。こんなにも熱中して読ませてくれるバトル物は久々です。終わり方が卑怯すぎるので、ただひたすら続刊が早急に発売されることを願います。